サイエンス・イデア便り №74(2012年10月)

今月のテーマ :レンズを知ろう

すごしやすい季節になりました。晴れた日は湿度も低く、洗濯物もよく乾き、気持ちよくすごせますね。こんな日がずっと続くといいのになと思ってしまいます。

さて、今月のテーマはレンズでした。改めてテーマとして取り上げ、実験してみると色々なことに気づかされます。丸いものを通してものをみると、物が大きく見えることから今日のレンズにまで、いろいろと工夫を重ねてきた先人の努力には頭が下がる思いがします。

子供たちに、日常生活に何気なく使っている便利な物の原点を知ってもらうことも大事なことだと、改めて気付かされました。

「成功・失敗」を考える

10月に入ると、今年のノーベル賞の発表が順次行われます。今年は山中伸弥教授の生理学・医学賞受賞が発表され、連日、マスコミで騒がれているところです。その山中教授の談話の中に「研究の世界では打率が1割であれば上出来であり、1回の成功には9回あるいはそれ以上の失敗がある。若い人には恐れずに失敗をしてほしい」という言葉がありました。

私たちはなぜか、成功を望み、求め、かたや失敗を恐れます。その思いは殊のほか強く、失敗はよくないこと、否定しかありません。もっと失敗したという事実をしっかりと受け止めたいのですが・・・・。ことわざにも「失敗は成功のもと」とありますが、いざ失敗すると「ことわざ」を素直に受けいれる気持ちにはなれないというのも私たちの感情です。

現代社会は何事にもスピードを求め、すぐに結果を求めます。もちろん失敗せずに、早く結果のでることは素晴らしいことではあるのですが、そうでないことを否定していないでしょうか。そして無意識のうちに、子供たちにこの大人の価値観を押し付けていませんか。今一度、「成功・失敗」ということを考えてみませんか。

サイエンス・イデアで扱う実験や体験は基本的には失敗はありませんが、場合によっては私が想定したとおりの結果にならないことがよくあります。多くの場合は実験の手技の不慣れによるものが多いのですが、まれに、「なぜだ!」と言いたくなることがおこります。1時間という時間内に期待した結果を子供たちが得られない時、内心、とてもあわてます。「この実験は失敗だ」という言葉が浮かびます。でも、子供たちをみていると、実験の結果(私が失敗かもと思っている)を受け止め、きちんと表現してくれる場合がほとんどです。結果を知って(想定して)、実験を組み立てるとどうしても結果から物事を見てしまいがちになります。学習指導という点からみれば、間違いではないのですが、失敗を否定してしまうという危険性があるということを常に認識しなければなりません。そして、失敗の否定は子供たちに失敗のマイナス面を植え付け、失敗からの気づきを封印してしまう、このことを大人は知らなければなりません。実験で出た結果は結果です。まず、それを受け止める、それから検討する、そのようなものの考え方、捉え方のプロセスをこれからも大事にして、日々のプログラムを行いたいなと改めて決意した次第です。

来月(11月)のプログラムについて 

テーマは「食べ物の旅:体内編」す。食欲の秋、おいしく食べたご飯は私たちの体内でどうなるのでしょうか。

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