サイエンス・イデア便り №61(2011年9月)

今月のテーマ : 空気のはたらき

今年の9月は台風と共にやってきました。あまりにも速度の遅い台風は紀伊半島に甚大な被害をもたらしました。地震とは違い、こんなにも気象情報が得られる状況になっても、まだまだ豪雨によって想定外の現象が起こるのだということ、そのことを再認識し、自然のきびしさを実感する9月の始まりとなりました。自然は私たちに大きな恩恵を与えてくれていますが、厳しさもまた、持ち合わせているのだということを忘れてはいけないと思います。

さて、今月のテーマは空気です。あまりに身近すぎて、その存在を忘れてしまいがちですが、今月の実験をとおして、空気が色々な性質を持ち、その特性を我々が利用していること知るきっかけになってほしいと願っています。

今月の実験から

今月のテーマ「空気」ですが、日頃は空気の存在を意識せずに毎日を過ごしています。でも私たち人間は(人間に限らず、多くの生物にとっては)空気がないと生きていくことはできません。そんな大事な空気ですが、空気について私たちが知っているのはごく一部のことだけです。あまりに身近すぎるものはその存在を当たり前としてしまって、大事にすることを忘れてしまいがちです。

身近すぎて、その存在の大切さを忘れがちなもの、身の回りに結構ありそうですね。「凄い」と感動したことも、それが続くと当たり前と思ってしまう、そんな気持ちが私たちにはあるのかもしれません。日常はそんなにサプライズなことが続くわけではなく、当たり前のことが日々、繰り返されているものなのです。その当たり前のことが続く私の日常が、実は本当に多くの人たちの日々の努力に支えられているということが、災害、とりわけ自然災害がおきると、感じずにはおれません。

朝、起きて蛇口をひねるときれいな水が出てくること、リモコンのスイッチを押すだけでテレビが映り、様々な情報を伝えてくれること、などなど・・・・電気、ガス、水道、あるいは電話など、ライフラインと呼ばれるものはいつでも当たり前に使えると私たちは錯覚しているのです。これらのものの日常性の維持には多くの経費がかかっているのはもちろんですが、多大な人の努力なくしてはなりたちません。

災害の時、ライフラインの速やかな復旧をと、よく言われています。もちろん、ライフラインですからとても大切なことです。では、もし、空気が同じ条件で存在しなくなったら、速やかな復旧をと言っている場合ではありません。空気環境の悪化は即、死に繋がることもあるのです。

そのことを決して忘れることなく、空気環境をよくする努力が日々、とても大切であることを今月はしっかりと覚えておきたいと思います。

時は9月、秋です。空気が次第に大陸性のものに入れ替わり、爽やかな風が

感じられるようになってきます。湿度が下がり、空気中の水分量が少なくなり、空の青さが実感できる時です。この爽やかな空気、空の青さに毎年出会えるように、私たちは自然としっかり向き合って、自然の恒常性の維持に真剣に取り組んでいかなければならないと感じています。

来月(10月)のプログラムについて

テーマは「音を聞くとは」す。日常生活で何気なく聞いている様々な音ですが、音が聞こえることに必要なことは何でしょうか。実験しながら確かめます。

 

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