サイエンスイデアだより　№３５（２００９年７月）

夏の思い出

夏休みです。親にとっても、子供にとっても長いお休みが始まります。夏休みの思い出はと聞かれると、何を思い出しますか。夏休みというとやはり一番に思い浮かぶのは「宿題」ではないでしょうか。私が子供の頃は大多数の家にはエアコンなどなく、夏はせいぜい扇風機の風だけですごしたものです。その記憶では、夏は暑い、何もしたくないとつながります。そのツケはもちろん、夏休み最後の１週間にやってきます。特に、図工系が苦手だった私は、まともな作品を作った覚えがありません。私が何かを作ろうとすると、そのひどさに父が怒って横取りして、作ったこともありました。

さて、夏休みの思い出が苦労した宿題話だけではあまりにつまらないですね。もう少し、昭和を懐かしむ話を・・・（今は少し、昭和ブームだとか）

昭和にあって、平成にないもの・・・思い出しました。夏の大掃除です。

地区一斉に行われるこの行事は、夏休み中の一大イベントでした。畳がすべて、表に運び出されて、日光に干されるのです。床板を掃除し、床下に殺虫剤をまき、そして畳をたたいて、ほこり落としをし、また、屋内に運び入れ、元どうりセッティングしていくのです。暑い夏の一日（もちろん日曜日ですが）があざやかによみがえってきます。

考えてみると、夏の大掃除は、高温多湿の日本の夏で、すこしでも、家の中の湿気を取り除き、カビや様々な害虫を退治する意味があったと思います。

住宅事情や家族構成の変遷に伴って、夏の大掃除は姿を消してしまったのです。家族が揃って、一つの目標に向かって一日がんばる、そんな良い習慣でもあった大掃除が少し懐かしく思い起こされました。

私の大掃除の個人的なもう一つの思い出は、井戸に冷やされたスイカです。冷蔵庫ではなく、井戸に冷やされたスイカを大掃除の日の３時のおやつに食べるのです。でも、スイカ１個を家族でわけるのですから、子供のもらえる分はそんなに多くはありません。「大人になったら、１人でスイカを１個食べるぞ」と心に誓ったものでした。（もちろん、大人になって、スイカの１個食いに挑戦してみましたが、

１人で食べるスイカはそれほどおいしいものではありませんでした。スイカは井戸で冷やし、大掃除という家族共同作業のおやつに大人数で食べる、この情景が不可欠なようでした）

さあ、子供たちにとって、今年の夏休みには夏の暑さと共に思い出せる、そんな素敵な体験がありますように、と祈っています。