サイエンス・イデア便り№54 (2011.2月)

今月のテーマ : ビタミンとは

今冬は雨が少なく、乾燥し、寒い毎日が続いています。寒波が去ったかと思うと、またやって来たりと、まだまだ安心はできません。でも2月も半ばを過ぎ、梅も咲き始めました。

春は確実に近づいています。

さて、今月のテーマは「ビタミン」です。日常的な言葉としてもよく聞くので、何となく知っているつもりになっています。でも、調べてみると、いろいろなことがわかりました。レモン、みかん、ダイコンの3種類の果物、野菜のビタミンCの量を食品成分表で調べてみるとレモンが一番多く、みかんはその半分、ダイコンはみかんの半分以下です。でも実際に実験してみると、ダイコンのビタミンCも多いことがわかりました。ビタミンCと言えばレモンやかんきつ類と思い込んでいますが、意外と大根おろしをしっかり食べるとビタミンCが摂取できるのだなと再認識しました。

ビタミンの雑学

ビタミンとはラテン語でVita(生命)に必要なアミン(amin)の意味で微量で生体の正常な発育や物質代謝を調節し、生命活動に不可欠な有機物であると定義されています。ふつう動物体内では生合成されないので食物などから摂取しなければならないとされています。ビタミンは当初、発見順にアルファベット順に仮称として命名していましたが、研究がすすむにつれ、以前発見したものがビタミンではなかったり、重複していたりすることがわかり、以前の命名を取り消したりして、現在の形になりました。

ビタミンの発見の歴史を調べてみると、色々とおもしろいことがあります。さきほど、動物体内では生合成されないと書きましたが、ビタミンCを考えてみてください。私たち人間はビタミンCが必要なので、毎日、野菜や果物を食べますが、犬や猫が野菜や果物を食べるでしょうか。(もちろん最近のペットフードは栄養バランスが考えられているのですが)これは犬や猫がビタミンCを体内で生合成できるから摂取の必要がないからです。このビタミンC発見の歴史で使われた実験動物はモルモットで私たち人間と同様、ビタミンCを生合成できません。このモルモットに白米を食べさせ続けると、ビタミンC欠乏症の壊血病になり青草を与えると治ることがわかり、ビタミンC発見研究が進んだとされています。もし、このときにマウスやラットなどのネズ類やウサギが使われたなら、ビタミンC発見の歴史は変わっていたかもしれません。ビタミン研究で日本人に深く関係するのはビタミンB1です。この欠乏症は

「脚気」です。今ではあまり聞くことの少なくなった病名ですが、江戸中期以降、1900年代前半は日本でよく知られた病気でした。とりわけ江戸中期以降「江戸わずらい」と呼ばれた病で地方から江戸に働きに来ると罹るが、田舎に帰ると治る病であると知られていたそうです。これは江戸中期以降、精米の技術が発達して、江戸では白米を食べる習慣が定着したからだと言われています。しかし、地方ではそれほどではなく、玄米のまま、あるいは雑穀をまぜて食べるため、「江戸わずらい」になっても田舎に帰ると治ったということが理解できます。この事実から、米の胚芽部に有効な成分があると着目され、これがビタミンB1発見へとつながっていったことが知られています。病気の原因の一つが食習慣にあることは今も昔も変わらない事実のようですね。

来月(3月)のプログラムについて

テーマは「砂糖の科学」です。砂糖の原料や種類、加熱による変化を調べます

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